リスクアセスメント入門マニュアル
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リスクアセスメントの手順と活用及び効果
1.【リスクアセスメントの手順】

 第3章の3で示したリスクアセスメントの5つのステップを、具体的に説明すると次のとおりとなります。

【 STEP 1 】 : 危険性又は有害性の特定

    【 STEP 2 】 : リスクの見積り
    【 STEP 3 】 : リスク低減対策内容の検討
    【 STEP 4 】 : リスク低減対策の実施
    【 STEP 5 】 : 実施内容の記録
【 STEP 1 】 : 危険性又は有害性の特定

 労働災害防止の基本は、結果としての災害を発生させるもとになる様々な危険性又は有害性を如何にして無くすかということです。
 表面に現れた災害を発生させる状況について対策を実施したとしても、潜在的に在る危険性又は有害性がそのままの状態では、そこから発生する危険性又は有害性は再び表面に現れ、災害が発生することになります。

危険性又は有害性から災害発生までの概念図

危険性又は有害性から災害発生までの概念図

 

 そこで、作業標準等に基づき、作業者の就業に係わる危険性又は有害性を特定するために必要な単位で作業を順序だてて分解し、危険性又は有害性を洗い出したうえで、各作業における機械設備、作業等に応じてあらかじめ定めた危険性又は有害性の分類に則して、各作業における危険性又は有害性を特定します。
 また、工事現場においては、店社のデータベースにある危険性又は有害性に加え、工事の特性を考慮し、工事工程に対応した危険性又は有害性を特定することが重要です。

(1)

 作業に潜む危険性又は有害性の洗い出し

       リスクアセスメントを実施するうえで非常に重要ですので、作業標準、作業手順等に基づいて特定に必要な単位で作業を洗い出します。
 作業標準がない場合には、当該作業の手順を書き出したうえでそれぞれの段階毎に危険性又は有害性を特定します。
    (2)  危険性又は有害性の分類
       危険性又は有害性の分類は、指針に定められている分類例を添付してある参考資料に示します。
    (3)  危険性又は有害性の特定方法
@

 危険性又は有害性の特定にあたっては、次のことを考慮して特定します。

 作業手順のステップ毎に、「どのような危険又は有害なことが潜んでいるか」を特定します。

         現場の都合等による、作業変更時に「どのような危険又は有害なことが潜んでいるか」を特定します。
         作業設備に「どのような危険又は有害なことが潜んでいるか」を特定ます。
         指示、監督上「どのような危険又は有害なことが潜んでいるか」を特定します。
A

 危険性又は有害性の特定は、関係者が参加して漏れなく行います。

 管理監督者、安全衛生スタッフ、作業者など様々な者が参加し意見を出しあいます。

         漏れなくできるだけ多くの危険性又は有害性を特定します。
B

 洗い出した危険性又は有害性について「災害に至る予測される経緯(プロセス)」を明らかにします。

 表現の方法は、「〜するとき、(又は、〜したので)、〜(事故の型)になる」と表現します。

      玉掛け作業の作業手順による危険性又は有害性の特定(例)

N o ,

主なステップ

危険性又は有害性を明確にした災害の予測

1

玉掛けをする

荷にワイヤを掛ける時、吊荷が動き指を挟む

2

地切りをする

荷の重心の取り方が悪く荷ぶれを起し、荷が激突する

3

巻き上げる

重量目測違いで玉掛けワイヤが切断し、荷が落下し下敷きになる

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【 STEP 2 】 : リスクの見積り

 リスクの見積りは、「災害の程度の重大性」と「災害発生の可能性」をそれぞれ組合わせて行います。
 さらに、リスクの見積りにより、リスク低減措置について優先度を決定します。
 なお、洗い出した危険性又は有害性が「どのくらい危険なものか」の見積り基準を作成しておかなければなりません。

リスクの見積もり
(1)

 リスクの見積り方法

       リスクの見積りの方法は、次のようなものがあります。
 どの方法で行うかは店社や工事現場の規模やリスクアセスメントを実施する者によって、適切な方法を選択してください。
@

 数値化の方法

       

 負傷又は疾病の重大性(重篤度)と発生する可能性の度合を、一定の尺度によりそれぞれを数値化し、それらを加算又は乗算してリスクを見積もる方法です。

      A  数値化しない方法
         負傷又は疾病の重大性(重篤度)と発生する可能性の度合を、「極めて重大」、「可能性がある」などのような言葉や○△×のような記号でリスクを見積もる方法です。
(2)  見積り基準
       見積りをする基準は、あらかじめ重大性(重篤度)と発生する可能性(度合い)毎に決めておくことが必要です。
    (3)  リスクの見積りに当っての留意事項
@

 特定した危険性又は有害性が「どのくらい危険なものか」を明らかにします。

      A

 判断基準に基づきリスクを見積ります。

      B  「災害の重大性」と「災害の可能性」の2つの要素で見積ります。
      C  具体的に誰に、どのような負傷又は疾病が発生するのかを予測したうえで、「災害の重大性」を見積ります。
      D  過去に発生した負傷又は疾病の程度ではなく、最悪の状況を想定した最も重篤な負傷又は疾病の重大性を見積ります。
      E  「災害の重大性」は基本的に休業日数、後遺障害の等級、死亡等の労働能力の損失を尺度として使用します。
      F  有害性が立証されていない場合でも、一定の根拠がある場合は、その根拠に基づき、有害性が存在すると仮定して見積もるよう努めます。
      G  直接作業を行う者のみならず、作業の関係で、その作業の周囲にいる作業者等も検討の対象とします。
(4)  リスクの見積り
       「重大性」、「可能性」のそれぞれの見積り基準値を示します。
      「重大性」の区分け

重 篤 度

点   数

死亡・障害等級(1級ないし14級)

3又は(×)

休業災害

2又は(△)

不休災害

1又は(○)

      「災害発生の可能性」の区分け

災害発生の可能性の度合

点   数

確実又は可能性が極めて高い

3又は(×)

可能性がある

2又は(△)

殆ど起こらない

1又は(○)

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【 STEP 3 】 : リスク低減対策内容の検討

 リスク低減対策の検討内容及びその際の留意事項は次のとおりです。

(1)

 法令に定められた事項がある場合には、それらの措置を必ず実施すると共に、次にあげる@〜Cの順番にリスク低減対策内容を検討のうえ実施します。

@

 設計や計画の段階から作業者の就業に係わる危険性又は有害性を低減します。

       

ア 高所で行う作業を地上で行う等、危険な作業の廃止・変更をする
イ より危険性又は有害性が低い材料へ代替する
ウ より安全な施工方法へ変更する

      A

 法令や会社の基準に基づく、作業の基本的な安全対策を実施します。

      B  上記2つの措置により除去しきれなかった危険性又は有害性に対し、作業標準・作業手順の整備、立入禁止措置、ばく露管理、警報設置、二人組制の採用、教育訓練、健康管理等の作業者を管理することによる対策を実施します。
      C  呼吸用保護具や保護衣等の使用を義務付けます。
 ただし、上記3つの措置の代替とすることはできません
(2)  検討にあたっては、公害その他一般公衆の災害を防止するための法令についても遵守するようにします。
    (3)  低減されるリスクの効果に比較して、必要な費用等が大幅に大きいなど、両者に著しい費用対効果の不均衡が生ずる場合を除き、可能な限り前記(1)の順番でリスク低減対策を実施します。
 しかし、不均衡を発生する場合であっても、死亡や重篤な後遺障害をもたらす可能性が高い場合等、著しく合理性を欠くとはいえない場合は、対策を実施します。
    (4)  適切なリスクの低減対策としては、上記(3)のような不均衡とならない場合にあっては、合理的で実現可能な程度までリスクレベルを下げます。
    (5)  適切なリスク低減のための対策を決定する際には、既存の厚生労働省等が示した行動指針、ガイドライン等に定められている対策と同等以上とすることが望ましいといえます。
    (6)

 高齢者、日本語が通じない作業者、作業を初めて間もない作業者等、安全衛生対策上の弱者に対しても有効なレベルまで低減対策を実施します。

    (7)

 死亡・後遺障害又は重篤な疾病をもたらす恐れがあるリスクに対して、適切なリスク低減対策の実施に時間を要する場合は、暫定的な対策を直ちに実施します。

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【 STEP 4 】 : リスク低減対策の実施

 実施対象、実施時期、実施責任者等、具体的な事項を定め、確実に実行します。リスクの見積りにより定められた優先度に従って、リスクを低減するための対策を決定します。
 リスク低減対策の検討にあたっては、あらかじめリスクレベルに対する優先度を示した低減対策検討基準を明らかにしておきます。

      見積り結果とリスクの優先度の対応表

見積り結果

内    容

優先度

対策の検討基準

6又は××

直ちに解決すべき問題がある

5

即座の対応と抜本的な対策が必要

5又は×△

重大な問題がある

4

抜本的な対策が必要

4又は×○,△△

かなり問題がある

3

何らかの対策が必要

3又は△○

多少問題がある

2

現時点で対策の必要は無いが注意を要する

2又は○○

問題は少ない

1

現時点で対策は必要なし

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【 STEP 5 】 : 実施内容の記録

 リスクアセスメントの実施内容を記録します。
 リスクアセスメントに関する記録は、実施の証とするとともに、後々のリスクアセスメントのデータ(資料)として活用できるよう理解し易いものにし、誰でも閲覧可能な状態にします。
 また、全ての記録は工事現場から店社へ送付し、店社は整理し、データベースを更新しておきます。
 こうすることで、新規工事現場で行う事前評価やリスクアセスメントの実施に活用することができます。

(1)

 記録すべき事項

@

 洗い出した作業

      A

 特定した危険性又は有害性

      B  見積もったリスク
      C  設定したリスク低減対策の優先度
      D  実施したリスク低減対策の内容
(2)

 記録保管の効果

@

 自由に閲覧できることによって、リスクアセスメントに対する共通の理解と認識ができます。

      A

 毎日の危険予知活動等の災害防止活動に活用できます。

      B  企業の財産として、社員が共有できます。
      C  作業者教育の教材として活用できます。
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